廣部剛司建築研究所

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大正期に建てられた旧木造家屋を解体して建てられた住宅。

親世帯には床柱など旧家屋の記憶も移植されています。

平面的な分割による二世帯住宅で、庭の部分を親世帯が使い、

子世帯は<切り取られた外部>を擁することによってそれぞれ

自然と切り離されることなく、プライバシーを保つ構成。

外壁には櫛引の樹脂が塗られ、陽の光によってその表情を微妙に変えていく

二世帯住宅

中庭住宅

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ガレージ廻り

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子世帯アプローチ

道路と内部の緩衝空間。

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子世帯玄関より階段

メインフロアが2階にあることを示唆する空間

突き当たりのガラスブロックは一日中白い光で輝き、

上部のトップライトの光が刻々と移り変わっていく

階段板には米松の無垢材

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赤い葉を春からつけるノムラモミジに面したテラス

グレーチングのテラスの下は水盤になっていて、水音が響いてくる

テラスの建具を開放することにより、同レベルで内外が連なり、

光の筒である階段室が一層浮かび上がる

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階段見上げ

家の中に常に<外部>がある

空模様を映し出し、鳥の渡りを映し、夜は月や星を切り取る

夏の通風のためにトップライト側面には換気口が設けられている

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書斎部分

R壁の向こうに洗面・浴室

机の上にもトップライトがあり

手元に光が落ちる

意識が抜けていく

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階段室の両側に書斎とLDK

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2階LDK

抑制された西日が地球の動きを室内にもたらす

床材は黒のコルクタイル

光を反射するため、坪庭の緑が写り込んでいる

床暖房が施されており、直に座ってもコルク特有の柔らかい質感

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冬の日差しが入り込んだ室内

<音楽的>に割り付けられたパイプスクリーンが繊細な光と影を生み出す。

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つきあたりの坪庭に面してサッシュがはめられている

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もう一つの坪庭にはソヨゴの木が植えられていて、秋に赤い実を付ける

キッチン廻りはコンパクトかつ使いやすく纏めている

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天窓からの光で日中はほとんど照明の必要がない

この写真は日が暮れる直前を狙ったもの

外光と人工照明が重なり合う

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浴室

タイル貼りの空間に開閉式のトップライトが一つ。

洗面スペースとの間は強化ガラスで仕切られていて、圧迫感を感じさせないよう配慮

太陽や月光が移動していく

天井の燻銀タイルは微妙な光を映し出す

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強化ガラスで製作された洗面台

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寝室から水盤越しに坪庭
天井には和紙

引き込み戸を開けると内外の境界が曖昧になり拡がりが生まれる

水盤には月が映り、循環する水音が響く

外部から寝室は見えないため、ロールスクリーンを下ろさずに

眠りにつくことができる

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 封書に封じ込めたラフスケッチが「建築になる」ことを祈るような気持ちでコペンハーゲンの郵便局をあとにした。9月の北欧は自分にとっては肌寒く、Tシャツ一枚で歩く人びとの中で自分一人が気候に適応できていないような深い疎外感を味わっていた。いや、疎外感は気候のせいだけではない。芦原義信先生の事務所を飛び出して建築を巡るために長い放浪をしていた自分にとって、どこにも所属していない自由と、先の不安はいつもセットで旅の荷物と共に引きずっていた。
 実家を建て替えるということは、ずいぶん前から出ていた話だった。しかし、父親は本格的な検討をする間もなく旅立ってしまった息子にしびれを切らして、既存家屋の解体も終わらせていた。そして仮住まいをしている父親から「いますぐプランを送れ」というメッセージが届いたのだ。もう待ちきれないから何処かの設計事務所に頼むつもりだということを添えて…
 毎日毎日、名作と言われる建築と向き合いながら、自分がつくりたい空間とは何だろう? と考え続けていた。「作り手」として生きていきたいと心に決めていたから、建築を見て回ることは教養を高めるためでもないし、ましてや物見遊山でもなかった。名作の向こうに「自分が見たいもの」がおぼろげにでも見えないだろうかという問いを発し続けていただけだった、と今は思う。
北欧にいたときで半年弱。ひたすらそんな日々を送っていた。
 送ったスケッチにはその時期でなくては、おおよそ考えなかったであろう案を描いていた。2ヶ月早かったら白旗を揚げていたかも知れないけれど、その時は不思議と自然に手が動いたのだ。
そのスケッチの案がやや難解だったことも手伝って(もちろん親心だということは分かっている)なんとか旅立ってから8ヶ月、帰国のタイミングまで待っていてくれた。
「では2ヶ月で着工することにする」
帰国してすぐに、いつ寝ているのかよく分からないような状態で製図板に向かい、設計図を描き上げて確認申請を通した。この余裕の無さは、この時ばかりは上手く作用したように感じている。それは、旅の中で感じたことを整理するゆとりもなく、他の邪念が入り込むこともなく必死で描き続ける時間だった。
 この初めて自分の名前で手掛けた建築が雑誌などに取り上げられて、建築家としての第一歩を踏み出すことができた。家族には感謝してもしきれないと思っている。
 時折、この家には雑誌などの取材が入る。建築家の自邸ということで「ああしておけば良かったと後悔しているところはありますか?」という質問を受けることがあるけれど、(本当に)「ありません」と答えている。
処女作をつくってから10年以上が経つから、今同じ条件で設計したらきっと違うものが出来上がると思うけれど、あのときはあれが自分自身の全身全霊だった。だから「たら」「れば」は想像できないのだ。
築13年目。いまだに家に帰るたびに建築から問いかけられているように感じる。
「あのときの情熱を憶えているか?」 …と。





建築概要
名称  :諏訪の家-casa suwa-
所在地 :神奈川川崎市
主要用途:専用住宅(二世帯住宅)
主体構造:壁式鉄筋コンクリート造
規模  :地上2階
敷地面積:668.31m2(201.8坪)
建築面積:188.05m2(56.8坪)
延床面積:323.79m2(97.8坪)
竣工  :1999年11月

構造設計:有村建築設計事務所
施工  :馬淵建設株式会社