廣部剛司建築研究所

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北傾斜のコートハウス



もともと建物があった痕跡のない手つかずの傾斜地。北東に向けて斜めに下がった敷地を訪れた時に感じたことは2つあった。1つは土を動かす仕事の難しさや傾斜地で高度斜線が掛かっていることから来る法規制の複雑さといった「困難」を。そしてもう一つは南下がりの傾斜地ではないので計画自体は難しいけれども、敷地の上部からの陽光を柔らかく受け止める建築に対するある種の「期待感」だった。
 設計の期間を通して地盤面と建築のボリューム(レベル)との関係がずっと検討されていったのは「困難」の部分で予想されていたこととはいえ、かなりギリギリの可能性を延々と模索する作業だった(たとえば、2階南側個室のFLが下がっているのは渡り廊下のヘッドクリアランスを確保するため)。
 傾斜地を切り開いて、生活空間となる床を作るためには擁壁を作って土留めをする必要がある。ここではその擁壁と建築をいかにして「一体のもの」として設計するのかということがテーマだった。実際は擁壁に求められる機能と地上の木造部分のそれとは、構法的にはかなりの距離感がある。土圧を受けるコンクリートの壁と木組みの「家」。その関係を検討していくうちに実はその「間」にこそ糸口があるのだと気付いた。「間」を開いていって中庭的な空中庭園を配置したときに、それぞれの生活空間に敷地上部から注ぐ柔らかな光と風を届け、お互いに気配を感じ生活できる関係を組み上げることができるだろう、と。南側に離れのような個室を配置、その間に中庭を配することで奥行きが深くなりすぎず、向き合って<共に暮らす>感覚がもたらされるだろうと考えた。
 また、領域感を曖昧にするために、木造外壁部分も擁壁部分も同じ塗壁で仕上げ、リビング側は特注の全開口サッシュを採用している。これによってテリトリーが広がり、建ぺい率を超えたボリューム感がもたらされる。
 敷地が南北に長いこと。断面的が3層にわたることも感じられるように、階段室は地下の玄関から2階まで一直線に抜けている。ここで感じる長い距離感も家の大きさを感じ取るために一役買ってくれる。そして、内部空間の中での「庭」のように感じられるように光を導いた。
必要とされた諸室を配置しながら、それぞれの関係性を組み上げる。その行為の中に「間」を介在させることによって建築自体がひとつのテキスタイルに紡がれていくような引力を持ち得たのではないかと感じている。

(廣部剛司)


建築概要
名称  :北傾斜のコートハウス
所在地 :東京都町田市
主要用途:専用住宅
主体構造:RC造
規模  :地下1階 地上2階
敷地面積:160.21(48.46坪)
建築面積:63.21(19.12坪)
延床面積:211.53㎡(64.0坪)
竣工  :2015年3月

施工  :山菱工務店